2017年12月8日金曜日

事件

北海道新聞の夕刊を配達している。
去年の4月からなので19ヶ月と言うことになる。

販売所のHONDAカブを借りての配達。
約150軒、3区域の受け持ちになる。
2度目の冬を迎えた。
去年は最初のアイスバーンで滑り転けた。
暫くは恐る恐るの走りをしていたのだが慣れとは恐ろしいもの。
今年はそれがない。

だが寒い。
今年は特に寒さと雪が早い。

その販売所の給料日は、毎月6日となる。
なぜかは知らぬ。
集金が済んだタイミングなのだろうと推察している。

一昨日の6日は、特に寒さの浸み込む日だった。
口元までヘルメットのフェースカバーで覆われていても
頬を刺す寒風で顔が痛んだ。

帰宅して自分の家の夕刊が未配。
雪が降ってからの最近は遅れがち。
夏に入った若い衆が担当している。
自転車での配達が出来なくなったので遅れている。

それが7時になっても届かない。
その時間から販売所に電話するのは、気が引ける。
だからと言って自分で取りに行くのも面倒。

ま、夕刊だし大した記事もないだろうし。
明日もらおう。

ここからはその若い衆の科白。
無論俺の創作。





止めた!!
止めた、止めた、止めた!!
もう駄目。
寒いもの。




この間から寒くて耐えられない。
辞めようと決めてたのだから。



今日は給料をもらったし。
今日のタイミングが一番いい。

でもいつ言い出そう。
今日の分を配達する前に言いたいけど、今日の今日では怒られそうだな。
仕方ない、今日の分だけは配達するか。


寒いなぁ~。

こんなに寒い思いをして1ケ月1万円そこそこしかもらえないなんて。
なんて率の悪い仕事なんだろう。
夏なら自転車でスィ~と終わらせられる。

でも雨の時は、辛いよなぁ。
雨合羽は買ったけど蒸れてTシャツがびっしょりになる。
パンツだって汗で濡れてるし。


親に無断で大学を止めた。
友達にはなじめないし勉強だってことさら好きな訳でなし。

何か仕事を探さなくてはと気持ちが焦る。
何軒か面接に行ったけど、飛び込みの営業とか深夜のコンビニやファミレスとか。
辛い仕事しかないもんなぁ。
仕方ないから新聞の配達してるけど1万円しか稼げない。

こんなに辛くて1万円なら深夜勤務でも
月に15万円は貰えると言っていたあそこの店のほうがいい。

電話してみたら何時から来られますか?って言ってくれた。
それでは、今日からと応えた。

僕は、もうこんな寒い辛い仕事をしなくていい。

しない。
したくない。
手がかじかむ。
指が痛い。

客の家からは、夕餉の匂いが漏れ渡る。
あの匂いは、辛さを3倍加速させる。
幸せな匂い。
暖かな匂い。

みじめだなぁ。
可哀想な僕。

止めた。

新聞は、あそこの小川の橋から捨てよう。
もうこんなの止めよう。


想像終わり。

そう、奴は配達すべき夕刊をどこかに廃棄した。
販売所は未配の電話が鳴りっぱなしになった。

俺の家にも届いていないのはこのためだった。

販売所の社員が言う。
10年に一人くらいは、出てくる。

そうか10年に一人の逸材。
ではない。
秀でていないのだから。
反対語なら何というのだろう。
調べると凡才だという。

否、凡才でもない。
凡人は、そんな大それたマネはしない。
普通に生きて行こうと努力する。

切れる人か?
いやそれも違う気がする。
欠けてる奴。
欠落人間こそふさわしい。

想像する力が欠如している。
これをすればどうなるのか。

10年に一度の欠落人間。

肝心なことを相対して言うことが出来ない。
逃げる。

その行為は、直接自分へ刃となって振りかかる。
傷として残る。
深くざっくりとした傷。
養生が悪いと膿を持つ。

治りが遅い。
傷を抱えて一人怯え寂しさに打ち震える。

1回で懲りればいいけど。



このおやじ、アゴハリ一族
世に散らばり社会を斜めから見つめブツブツ文句を垂れ
世界の滅亡を防ぎつつ勝手気ままに生きている。
札幌市在住、顎が張っている、へそ曲がりで頑固。
斜めから見る習性は、周囲に疎まれる。
趣味:ロードバイク/ クロス カントリースキー/ そして、コンサドーレ札幌のサポーター

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