「中学の時に他校のバッターを二人病院送りにしていることは、事実でした。
嵯峨先輩は、キラーSに間違いありません。」
部員に白波が起った。
「その二人に話を聞きました。
二人とも証言しています。
嵯峨先輩は、キラーSだと。」
ここまで言って一息ついた。
みんなの顔が青ざめている。
そして続けた。
「内角を果敢に攻めてくる。
打ち気に逸はやっていた時内角ストライクぎりぎりのボール球が来た。
どうしてもバットが始動してしまう。
打ったとしても凡打間違いなし。
そこでバットを止めた。
しかし避けられなかった。」
一度呼吸を整える。
「ルールの中のプレイ。
ピッチャーとしていい意味のキラーS。
バッターにとっていやらしいキラーS。
避けられなかった自分を悔やんだけれど
ピッチャーを恨んでいないと証言してくれました。」
僕たちピッチャーは、内角への投球を苦手とします。
当てて塁を埋めてしまうことと怪我をさせないだろうかという弱気のためです。
甘くなると安打の危険も大きくなります。
嵯峨先輩は、コントロールに磨きをかけて内角攻めという大きな武器を持ちました。
素晴らしきキラーSです。」
部員は、頷いている。
日ごろの嵯峨先輩への評価そのままであった。
頷きつつ疑問を顔にしている。
でもお前の場合は?
2019年5月14日火曜日
小説 Lugh ルー 9
手術の縫合痕を鏡で見る。
息が止る。
呆然と見続けていた。
「ピッチャーを続けられるでしょうか?」
数日後の診察で聞いてみた。
「続けられるし、続けられない。」
との答え。
靭帯の損傷が重なっている。
切れた一部を接合したとしても
高いパフォーマンスが必要なアスリートにとって怪我前の肩に戻れるかどうか?
1年をかけてなんとか怪我前に近い状態には、戻るだろう。
趣味としてのプレイなら間違いなくできるようになる。
ということだった。
僕の肩靭帯損傷は、正確には腱板不全断絶だという。
腱板は、腕の骨の付け根の大きなゲンコツを首側からつなげている筋肉。
その繋げている末端の腕側一部損傷。
動かさずに安静させて徐々に治癒させる。
僕の場合は、不完全断絶の中でも軽度なので積極的に手術を勧められることはない。
僕は、靭帯の手術には、消極的な気持ちになっている。
その時の僕は、魂が抜けていたと後で聞かされた。
精神という支柱の抜けた肉体。
どこを見つめているのか焦点の判らない目。
精気の感じられない受け答え。
存在感がない。
食事をしても味がしない。
ただ仕方なく咀嚼して飲み込む作業をしているだけ。
手術の4日後にゴリと戸田さんが来てくれた。
そこで野球部に大きな亀裂が走っていることを聞かされる。
息が止る。
呆然と見続けていた。
「ピッチャーを続けられるでしょうか?」
数日後の診察で聞いてみた。
「続けられるし、続けられない。」
との答え。
靭帯の損傷が重なっている。
切れた一部を接合したとしても
高いパフォーマンスが必要なアスリートにとって怪我前の肩に戻れるかどうか?
1年をかけてなんとか怪我前に近い状態には、戻るだろう。
趣味としてのプレイなら間違いなくできるようになる。
ということだった。
僕の肩靭帯損傷は、正確には腱板不全断絶だという。
腱板は、腕の骨の付け根の大きなゲンコツを首側からつなげている筋肉。
その繋げている末端の腕側一部損傷。
動かさずに安静させて徐々に治癒させる。
僕の場合は、不完全断絶の中でも軽度なので積極的に手術を勧められることはない。
僕は、靭帯の手術には、消極的な気持ちになっている。
その時の僕は、魂が抜けていたと後で聞かされた。
精神という支柱の抜けた肉体。
どこを見つめているのか焦点の判らない目。
精気の感じられない受け答え。
存在感がない。
食事をしても味がしない。
ただ仕方なく咀嚼して飲み込む作業をしているだけ。
手術の4日後にゴリと戸田さんが来てくれた。
そこで野球部に大きな亀裂が走っていることを聞かされる。
2019年5月1日水曜日
小説 Lugh ルー 8
翌日の朝練で戸田さんが
「凄かったみたいですね。」と聞いてきた。
「チッチ君から三者連続三振で二人のランナーを釘付けにしたって聞きました。」
最近は、ゴリのことをチッチ君と呼んでいる。
ゴリラよりモンチッチの方に似ているからモンちゃんと呼び始めた。
ゴリは、放送局のマスコットと同じだからチッチにしてくださいと願い変更された。
言われているゴリは、嬉しそうにしている。
「マッチポンプでね。」
「何ですかそれ?」
「火を付けておいて消火すること、自作自演だべ。」
「ゴリの活躍で逆転した試合を勝ちで締めくくりたくて気負ってしまった。」
「その後が、アメージングでさ。」とゴリ。
「チッチ君アメージングって似合わない。」
「そうだべか、照れる!」
一同こけている。
「あれは僕も、初めてイケたボールだった。」
「盛岡先輩が正直受けたくない球が来たって。」
「監督にも褒められた。
ずっと求めていたボールだったから昨夜は興奮して寝付けなかった。」
「ルー先輩とチッチ君、二人の活躍見たかったなぁ。」
モアイで小休憩をしながらこんな会話。
「私もガンバル!」
その場面がインターネット動画にアップされていた。
光榮高校の野球部白石、「イケメンの変顔、蛸の剛球」というタイトル。
その下にスレッドが沢山ついている。
正直に言うとうれしかった。
それが発端で練見のギャラリーが多くなっていった。
光栄は言うに及ばず、近隣の女子高校生が多い。
ただ、練習で黄色い声を掛けてもらうのは、複雑。
白石く~~ん、と応援の声が重なる。
どんな表情をしていいのかわからない。
中にプロ野球関係者と思しき人たちも目立つようになってきた。
バックネット裏にスピードガンを構えて陣取っている。
許可していないのでナインに直接話し掛けるられることはない。
そこは、気が楽。
ゴリは、あの活躍でレギュラー昇格しそうだ。
練習で様々な攻撃を試みている。
特にセーフティバントを磨いている。
そこに磨きをかけることで、内野が前目の守備を敷いてくる。
その分弱い当たりでも野手の間を抜ける確率が高くなる。
夏の甲子園に向けて部の練習は、さらに熱気を帯びてきた。
機運の盛り上がるチーム。
しかし、大きなアクシデントが待ち受けていた。
大きな事件。
「凄かったみたいですね。」と聞いてきた。
「チッチ君から三者連続三振で二人のランナーを釘付けにしたって聞きました。」
最近は、ゴリのことをチッチ君と呼んでいる。
ゴリラよりモンチッチの方に似ているからモンちゃんと呼び始めた。
ゴリは、放送局のマスコットと同じだからチッチにしてくださいと願い変更された。
言われているゴリは、嬉しそうにしている。
「マッチポンプでね。」
「何ですかそれ?」
「火を付けておいて消火すること、自作自演だべ。」
「ゴリの活躍で逆転した試合を勝ちで締めくくりたくて気負ってしまった。」
「その後が、アメージングでさ。」とゴリ。
「チッチ君アメージングって似合わない。」
「そうだべか、照れる!」
一同こけている。
「あれは僕も、初めてイケたボールだった。」
「盛岡先輩が正直受けたくない球が来たって。」
「監督にも褒められた。
ずっと求めていたボールだったから昨夜は興奮して寝付けなかった。」
「ルー先輩とチッチ君、二人の活躍見たかったなぁ。」
モアイで小休憩をしながらこんな会話。
「私もガンバル!」
その場面がインターネット動画にアップされていた。
光榮高校の野球部白石、「イケメンの変顔、蛸の剛球」というタイトル。
その下にスレッドが沢山ついている。
正直に言うとうれしかった。
それが発端で練見のギャラリーが多くなっていった。
光栄は言うに及ばず、近隣の女子高校生が多い。
ただ、練習で黄色い声を掛けてもらうのは、複雑。
白石く~~ん、と応援の声が重なる。
どんな表情をしていいのかわからない。
中にプロ野球関係者と思しき人たちも目立つようになってきた。
バックネット裏にスピードガンを構えて陣取っている。
許可していないのでナインに直接話し掛けるられることはない。
そこは、気が楽。
ゴリは、あの活躍でレギュラー昇格しそうだ。
練習で様々な攻撃を試みている。
特にセーフティバントを磨いている。
そこに磨きをかけることで、内野が前目の守備を敷いてくる。
その分弱い当たりでも野手の間を抜ける確率が高くなる。
夏の甲子園に向けて部の練習は、さらに熱気を帯びてきた。
機運の盛り上がるチーム。
しかし、大きなアクシデントが待ち受けていた。
大きな事件。
2019年4月16日火曜日
小説 Lugh ルー 7
僕の精神的課題は、氷の思考と炎の情熱。
勝つか負けるか、試合を左右する場面でオーバーヒ-トをして炎上しないこと。
緊張して固まる場面なのに心が躍り始めてしまう。
そんな場面が、うれしくなる。
楽しくなるなら問題はない。
むしろ良い傾向だと思う。
が、それが過ぎる。
熱くなり過ぎる。
ラッセ~ラー、ラッセ~ラ。
2階建て住宅ほどもある大きな行燈がうねり始める。
極彩色の行燈。
台座の下につけた複数のタイヤで進みながらうねる。
小さい頃に家族旅行で観たねぶた祭り。
お囃子が心のなかに流れ出す。
ねぶた太鼓が長いばちでリズムをたたき出す。
横笛が旋律する。
そこに摺り鉦かねが入ってお囃子は、一気に華やぐ。
ラッセラ~、ラッセ~ラ...
ピンチで迎える強打者。
打てるものなら打ってみろ。
相手との駆け引きなど忘れてしまう。
僕は、度真ん中の真っすぐで勝負を挑む。
ストライクにさえなればバッターは、打てない。
が、真ん中に投げているはずなのにストライクが入らない。
三振か四球かという出入りの激しいピッチングをしていた。
10歳くらいまでならこれで通用していた。
コントロールを磨けばこれからも通用するだろうと考えていた。
小学校4年生の時に某有名プロ球団元エースにコーチを受けた。
地域リトルリーグ主催の野球教室での事。
僕の投球を見て
「おしいなぁ、もの凄くもったいないなぁ。」と言う。
訝いぶかしく思い元エースの顔を見やる。
「球が速すぎる、力で投げ過ぎている。」
「なぜ速いといけないんですか?
なぜ力で投球してはいけないのですか?」
「世の中には、優れたバッターがたくさんいる。
速いだけならいくらでも打ってくる。」
それは理解できるけれど、コントロールを磨けば通用すると内心で反論した。
勝つか負けるか、試合を左右する場面でオーバーヒ-トをして炎上しないこと。
緊張して固まる場面なのに心が躍り始めてしまう。
そんな場面が、うれしくなる。
楽しくなるなら問題はない。
むしろ良い傾向だと思う。
が、それが過ぎる。
熱くなり過ぎる。
ラッセ~ラー、ラッセ~ラ。
2階建て住宅ほどもある大きな行燈がうねり始める。
極彩色の行燈。
台座の下につけた複数のタイヤで進みながらうねる。
小さい頃に家族旅行で観たねぶた祭り。
お囃子が心のなかに流れ出す。
ねぶた太鼓が長いばちでリズムをたたき出す。
横笛が旋律する。
そこに摺り鉦かねが入ってお囃子は、一気に華やぐ。
ラッセラ~、ラッセ~ラ...
ピンチで迎える強打者。
打てるものなら打ってみろ。
相手との駆け引きなど忘れてしまう。
僕は、度真ん中の真っすぐで勝負を挑む。
ストライクにさえなればバッターは、打てない。
が、真ん中に投げているはずなのにストライクが入らない。
三振か四球かという出入りの激しいピッチングをしていた。
10歳くらいまでならこれで通用していた。
コントロールを磨けばこれからも通用するだろうと考えていた。
小学校4年生の時に某有名プロ球団元エースにコーチを受けた。
地域リトルリーグ主催の野球教室での事。
僕の投球を見て
「おしいなぁ、もの凄くもったいないなぁ。」と言う。
訝いぶかしく思い元エースの顔を見やる。
「球が速すぎる、力で投げ過ぎている。」
「なぜ速いといけないんですか?
なぜ力で投球してはいけないのですか?」
「世の中には、優れたバッターがたくさんいる。
速いだけならいくらでも打ってくる。」
それは理解できるけれど、コントロールを磨けば通用すると内心で反論した。
2019年4月2日火曜日
小説 Lugh ルー 6
三人は、朝の峠越えを毎日こなしながら
それぞれのトレーニングを重ねている。
戸田さんは、部長先生に「君は福士さんを越えられる。」
と激励されているという。
福士加代子
女子陸上中距離のエース。
フルマラソンにも挑戦し2012年開催の
ロンドンオリンピック日本代表に選出されている。
彼女は、高校まで青森県北津軽郡で育った。
中学、高校と陸上の3000mを走っている。
この年代では、長距離に区分けされている。
高校までは、全国大会のファイナリストになれても
表彰台にあがることが出来なかった。
高校卒業後ワコールに入社。
その陸上部で頭角を現す。
20歳の2002年7月に8分44秒40の日本記録を樹立。
これは、現在も破られていない。
世界記録は、1993年中国の王オウ 軍霞グンカが持つ8分06秒11。
18歳未満のユース世代の日本記録は、
2005年、須磨学園高等学校:兵庫県の小林祐梨子が8分52秒33。
中学女子の日本記録は、1993年9分10秒18で、
中学記録10傑でも8分台は、記録されていない。
部長先生は、戸田さんに9分切りを課したという。
それだけ戸田さんの素質が高いということか。
中学日本一を狙っているということだ。
家でそんなことを話す。
大学で陸上短距離選手だった母は、
「小さい方が小さいエンジンで間に合うからねぇ。」
「3000mを9分で走るとしてそれを時速に直すと?」
父が質問してきた。
携帯の電卓機能で算出してみる。
「ええと1分間に333.333m。
これに60分をかけると19.999.99999m。
約20Km/hになる。」
「速いねぇ。それでは、100mを何秒で走ることになるの?」
「ええと、3000mを9分なので1000mは、3分。
100mだと1/10で0.3分。
0.3分は、60秒をかけると18秒になる。」
「そう、短距離選手なら軽るく流す感じだけれど
それを9分間持続するとなると相当な運動量よ。
直立二足歩行で手を自由に使うことができるようになった代償ね。
それぞれのトレーニングを重ねている。
戸田さんは、部長先生に「君は福士さんを越えられる。」
と激励されているという。
福士加代子
女子陸上中距離のエース。
フルマラソンにも挑戦し2012年開催の
ロンドンオリンピック日本代表に選出されている。
彼女は、高校まで青森県北津軽郡で育った。
中学、高校と陸上の3000mを走っている。
この年代では、長距離に区分けされている。
高校までは、全国大会のファイナリストになれても
表彰台にあがることが出来なかった。
高校卒業後ワコールに入社。
その陸上部で頭角を現す。
20歳の2002年7月に8分44秒40の日本記録を樹立。
これは、現在も破られていない。
世界記録は、1993年中国の王オウ 軍霞グンカが持つ8分06秒11。
18歳未満のユース世代の日本記録は、
2005年、須磨学園高等学校:兵庫県の小林祐梨子が8分52秒33。
中学女子の日本記録は、1993年9分10秒18で、
中学記録10傑でも8分台は、記録されていない。
部長先生は、戸田さんに9分切りを課したという。
それだけ戸田さんの素質が高いということか。
中学日本一を狙っているということだ。
家でそんなことを話す。
大学で陸上短距離選手だった母は、
「小さい方が小さいエンジンで間に合うからねぇ。」
「3000mを9分で走るとしてそれを時速に直すと?」
父が質問してきた。
携帯の電卓機能で算出してみる。
「ええと1分間に333.333m。
これに60分をかけると19.999.99999m。
約20Km/hになる。」
「速いねぇ。それでは、100mを何秒で走ることになるの?」
「ええと、3000mを9分なので1000mは、3分。
100mだと1/10で0.3分。
0.3分は、60秒をかけると18秒になる。」
「そう、短距離選手なら軽るく流す感じだけれど
それを9分間持続するとなると相当な運動量よ。
直立二足歩行で手を自由に使うことができるようになった代償ね。
2019年3月19日火曜日
小説 Lugh ルー 5
「おはようございま~す!」
早朝ゴリと戸田さんが一緒に現れた。
戸田さんの家は、こことゴリとの中間になるらしい。
昨日送って行きゴリが朝迎えに行くことになったのだという。
これ以上ない笑顔のゴリ。
バイクを用意している間に母が外に出て二人に挨拶をしている。
「おひさしぶりです、おはようございます、
早朝ゴリと戸田さんが一緒に現れた。
戸田さんの家は、こことゴリとの中間になるらしい。
昨日送って行きゴリが朝迎えに行くことになったのだという。
これ以上ない笑顔のゴリ。
バイクを用意している間に母が外に出て二人に挨拶をしている。
「おひさしぶりです、おはようございます、
昨日は、ルー先輩におごってもらいました。
ごちそうさまでした。」
戸田さんは、処世術も心得ているようだ。
ゴリも続いて「おはようございます、榊隆士です、よろしくお願いします。」
「気を付けてね、いってらっしゃ~い。」
運動クラブを経験した者の共通の習い、挨拶ができること。
「いってきま~す。」三人の声。
「白幡山の入り口までは、抑えて足温っためま~す。」
ゴリも続いて「おはようございます、榊隆士です、よろしくお願いします。」
「気を付けてね、いってらっしゃ~い。」
運動クラブを経験した者の共通の習い、挨拶ができること。
「いってきま~す。」三人の声。
「白幡山の入り口までは、抑えて足温っためま~す。」
「はい、了解しました。」
「ウィ~ス。」
羊が丘通りからホーマックの交差点を右折して厚別滝野公園通りに入る。
極緩い登りが続く。
僕が先頭を引く。
ゴリ、戸田さんと続く。
山の稜線が次第に鮮明になってくる。
夜から昼へ繋がるまだおぼろげな時間。
一日の始まり。
世の中が動き始めようとする時間。
スプリング・エフェメラル:春の妖精が咲く季節、
僕たちは、走っている。
筋肉の要求に応えて心拍が徐々に上がる。
呼吸に若干の苦しさが現れる。
酸素不足。
心肺機能が、運動に適応していない状態。
身体がまだ運動のスィッチに切り替わっていない。
デッドポイントというらしい。
運動量を落とさずに持続させる。
暫くすると呼吸が楽になる。
セカンドウィンドーが開くと表現するらしい。
であればウィンドーが閉じるとは、亡くなる時のことだろうか?
父の両親は、どちらもすでにウィンドーを閉じている。
父が小学5年生の時祖父が亡くなる。
その後祖母が父を育ててくれたと聞いている。
僕は、その祖母も知らない。
兄に言わせるとこの一段上にランナーズハイが存在するらしい。
どこまでも走っていられる気がしてくる。
自然に微笑んでいるらしい。
涎まで垂らそうかというほど気持ちが良くなるのだという。
脳内麻薬が分泌した状態。
僕はまだその感覚を知らない。
でも走っているときの爽快感は、特別。
それだけで十分に楽しい。
白旗山入り口を過ぎてアップは、お終い。
「ここから上げま~す。」
「了解で~す。」
「ウィ~ス。」
ゴリと順に先頭を引っ張り合う。
戸田さんが難なく着いてくる。
「戸田さん,いい走り。」
「せんぱ~い、さん付け止めてくださ~い。」
「なんと呼べばいいの~?」
「とんだ~がいいです。」
「ゴリ聞いた~?、とんだ~と呼んで欲しいって。」
「ウィ~ス」
考えたら僕とゴリは、40Lリュツクを背負っている。
彼女は、空荷。
そして二人の後ろだと空気抵抗が少ない。
それでなくても軽量だから登りは、得意。
だとしてもやっぱり相当の脚力を持っている。
「ウィ~ス。」
羊が丘通りからホーマックの交差点を右折して厚別滝野公園通りに入る。
極緩い登りが続く。
僕が先頭を引く。
ゴリ、戸田さんと続く。
山の稜線が次第に鮮明になってくる。
夜から昼へ繋がるまだおぼろげな時間。
一日の始まり。
世の中が動き始めようとする時間。
スプリング・エフェメラル:春の妖精が咲く季節、
僕たちは、走っている。
筋肉の要求に応えて心拍が徐々に上がる。
呼吸に若干の苦しさが現れる。
酸素不足。
心肺機能が、運動に適応していない状態。
身体がまだ運動のスィッチに切り替わっていない。
デッドポイントというらしい。
運動量を落とさずに持続させる。
暫くすると呼吸が楽になる。
セカンドウィンドーが開くと表現するらしい。
であればウィンドーが閉じるとは、亡くなる時のことだろうか?
父の両親は、どちらもすでにウィンドーを閉じている。
父が小学5年生の時祖父が亡くなる。
その後祖母が父を育ててくれたと聞いている。
僕は、その祖母も知らない。
兄に言わせるとこの一段上にランナーズハイが存在するらしい。
どこまでも走っていられる気がしてくる。
自然に微笑んでいるらしい。
涎まで垂らそうかというほど気持ちが良くなるのだという。
脳内麻薬が分泌した状態。
僕はまだその感覚を知らない。
でも走っているときの爽快感は、特別。
それだけで十分に楽しい。
白旗山入り口を過ぎてアップは、お終い。
「ここから上げま~す。」
「了解で~す。」
「ウィ~ス。」
ゴリと順に先頭を引っ張り合う。
戸田さんが難なく着いてくる。
「戸田さん,いい走り。」
「せんぱ~い、さん付け止めてくださ~い。」
「なんと呼べばいいの~?」
「とんだ~がいいです。」
「ゴリ聞いた~?、とんだ~と呼んで欲しいって。」
「ウィ~ス」
考えたら僕とゴリは、40Lリュツクを背負っている。
彼女は、空荷。
そして二人の後ろだと空気抵抗が少ない。
それでなくても軽量だから登りは、得意。
だとしてもやっぱり相当の脚力を持っている。
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