この先のカーブは、危険。
僕以外は、インターハイの上位選手が早いTTスタート順。
2番手早坂先輩が僕より速いと僕のゴール1分以内に入ってくる。
が、来ない。
僕に後れること43秒。
3番手以降も僕を破ることはなかった。
TT(タイムトライヤル)の1位になってしまった。
僕の記録は、平均時速約43km。
アマチュアエリートクラスの上位アヴェレージに匹敵する。
南海さんが
力があるのはわかっていたけれど
ここまで出してしまうとは、と驚く。
しかし、僕自身は生煮え。
走った気がしない。
この後のロードレースは、一般道路の使用もする。
だが片側のみでコース幅の狭いところが多い。
縦長のレースになり団子状態にならない。
西輪厚では、きついカーブも多発する。
そういう場所では、カーブ前で渋滞を起こし
後ろの選手ほど前との間隔が開いてしまう。
渋滞は、接触や転倒のトラブルが起きやすい。
全体に抜くポイントが限られるコース。
ロードバイクのスタートは、この大会の規定で
前列にTTレース上位者が位置する。
上位入賞はしろ、と言う南海さんの指令。
優勝してしまったとなると僕へのマークはきつくなる。
蓋をしに来る選手が送り込まれる可能性が高い。
レース初心者の白石君が駆け引きに巻き込まれると
余計なエネルギーを消費させてしまう。
作戦が決まった。
最初から逃げる。
渋滞の中で貰い事故のリスクを減らす。
初レースのハンデを無実化して僕のペースでレースを運べ。
逃げ切り優勝をしよう。
どんな逃げ切り方をしたらいいのかを南海さんがレクチャーしてくれた。
僕を見る参加者の視線を強く感じる。
確かにマークがきつくなりそうだ。
2019年10月30日水曜日
2019年10月16日水曜日
小説 Lugh ルー 18
勝ち虫が翔ぶ
開催日は、2012年10月7日日曜日、体育の日の前日。
第一回光榮高校ロードバイクレース若獅子杯が、正式名称。
あっという間にその日が来た。
TTレース(タイムトライヤルレース)のスタート地点。
アナウンスが流れる。
「エントリーナンバー1番、光榮高校1年白石亨蕗君」
ゲスト出場の僕は、一番のエントリーだった。
高さ1.5m程のスタート台にバイクを乗せ跨った。
両ペダルのピンディングを装着する。
バイクは、係が支えてくれている。
カウントダウンが始まる。
赤トンボが僕の右こぶしに止まる。
距離は、10km。
ハイスピードを維持する力が問われる距離。
札幌の中央を流れる豊平川の河川敷を利用したサイクリングロードがコース。
左右のうちの右岸コースで白石の清掃工場近くがスタート地点。
そこから学校近くの中の島まで、極僅かな登りの平坦。
空は、晴れ渡り少しだけ向かい風。
コースは、テープを渡し所々に係りを置いて完全に封鎖されている。
コーチをお願いした南海さんから、
TTでは、優勝するな。と言われている。
このレースに全力を出し切るとあとの100kmロードの終盤が持たなくなる。
だから一位になるな。
しかし、ロード優勝のために上位でフィニュシュしろと言う。
そんな難しい話、どう理解する?
開催日は、2012年10月7日日曜日、体育の日の前日。
第一回光榮高校ロードバイクレース若獅子杯が、正式名称。
あっという間にその日が来た。
TTレース(タイムトライヤルレース)のスタート地点。
アナウンスが流れる。
「エントリーナンバー1番、光榮高校1年白石亨蕗君」
ゲスト出場の僕は、一番のエントリーだった。
高さ1.5m程のスタート台にバイクを乗せ跨った。
両ペダルのピンディングを装着する。
バイクは、係が支えてくれている。
カウントダウンが始まる。
赤トンボが僕の右こぶしに止まる。
距離は、10km。
ハイスピードを維持する力が問われる距離。
札幌の中央を流れる豊平川の河川敷を利用したサイクリングロードがコース。
左右のうちの右岸コースで白石の清掃工場近くがスタート地点。
そこから学校近くの中の島まで、極僅かな登りの平坦。
空は、晴れ渡り少しだけ向かい風。
コースは、テープを渡し所々に係りを置いて完全に封鎖されている。
コーチをお願いした南海さんから、
TTでは、優勝するな。と言われている。
このレースに全力を出し切るとあとの100kmロードの終盤が持たなくなる。
だから一位になるな。
しかし、ロード優勝のために上位でフィニュシュしろと言う。
そんな難しい話、どう理解する?
2019年10月2日水曜日
小説 Lugh ルー 17
目標が、定まる。
8月10日、兄二人が揃って帰省した。
長兄が寛至ひろし、次兄が雅斗まさと。
寛雅蕗カンガルー兄弟が久しぶりに揃った。
家は、一気に賑やかになった。
そして手狭に。
二人も標準を軽く越える上背がある。
背の高い5人が揃ったのだから狭いのは、当然のこと。
今は、僕専用の部屋になっている子供部屋は、一気に窮屈な空間になった。
母は、おばぁちゃんの使っていた今は客用の和室に寝たらいいと提案した。
これから兄弟三人で寝ることなど、何回あるだろうか?
と自分たちの部屋だった子供部屋で寝ることを選んだ。
部屋で3人だけになった時に僕の怪我のことが話題になった。
僕は、「光榮高校の野球部白石、イケメンの変顔、蛸の剛球」
というタイトルのインターネット動画を見せた。
「全部真っすぐで三者連続三振、凄いなぁ。」
「実現させてたのか~。」
「蛸口やってるなぁ。」
「ルーの癖だもんな。」
「これが出来たからピッチャーに未練がない。
他の競技で世界を狙うことにした。」
「おっ!世界か。」
「ルーなら世界という言葉に現実味がでる。」
「自然に受け入れられる、応援するぞ。」
「ありがとう。」
「でも続けようという気は、全くない?」
「ない、とは言い切れない。」
「そうだよなぁ。」
「小さい時からずっとトレーニングを積み重ねてきたんだもんな。」
「でも理想の球を投げるためのフォームを取り戻せない。」
「ルーなら打てない真っ直ぐに拘らなくても十分一流になれる。」
「それでは、面白くないじぁない。」
「一流の中の一流がいい。」
「そうだな、ルーにはそれだけの素質がある。」
「そこに挑戦、おお~っ!!」
三人で声を合わせた。
母が「大きな声で騒いじゃだめよ。」
「は~い。」
8月10日、兄二人が揃って帰省した。
長兄が寛至ひろし、次兄が雅斗まさと。
寛雅蕗カンガルー兄弟が久しぶりに揃った。
家は、一気に賑やかになった。
そして手狭に。
二人も標準を軽く越える上背がある。
背の高い5人が揃ったのだから狭いのは、当然のこと。
今は、僕専用の部屋になっている子供部屋は、一気に窮屈な空間になった。
母は、おばぁちゃんの使っていた今は客用の和室に寝たらいいと提案した。
これから兄弟三人で寝ることなど、何回あるだろうか?
と自分たちの部屋だった子供部屋で寝ることを選んだ。
部屋で3人だけになった時に僕の怪我のことが話題になった。
僕は、「光榮高校の野球部白石、イケメンの変顔、蛸の剛球」
というタイトルのインターネット動画を見せた。
「全部真っすぐで三者連続三振、凄いなぁ。」
「実現させてたのか~。」
「蛸口やってるなぁ。」
「ルーの癖だもんな。」
「これが出来たからピッチャーに未練がない。
他の競技で世界を狙うことにした。」
「おっ!世界か。」
「ルーなら世界という言葉に現実味がでる。」
「自然に受け入れられる、応援するぞ。」
「ありがとう。」
「でも続けようという気は、全くない?」
「ない、とは言い切れない。」
「そうだよなぁ。」
「小さい時からずっとトレーニングを積み重ねてきたんだもんな。」
「でも理想の球を投げるためのフォームを取り戻せない。」
「ルーなら打てない真っ直ぐに拘らなくても十分一流になれる。」
「それでは、面白くないじぁない。」
「一流の中の一流がいい。」
「そうだな、ルーにはそれだけの素質がある。」
「そこに挑戦、おお~っ!!」
三人で声を合わせた。
母が「大きな声で騒いじゃだめよ。」
「は~い。」
2019年9月26日木曜日
死ぬこと以外は、かすり傷。
人の痛みは、100年待てる。
その刹那の痛みが最高値。
千歳市立病院に搬送検診後、帰札。
その夜は、自宅の布団に寝ることが出来ずにソファに座り寝た。
痛み止めの手は借りず。
病院でも
「我慢しないでくださいね、飲み薬が嫌なら座薬がありますから。」
看護師が何度も言う。
大層な我慢などしていない。
痛みを感じない体質なのだろう。
それとも日ごろの運動のお陰か。
昨日9月25日は、
事故から丸1ケ月が経ちプラス1日目。
来たるべく自転車復帰のために
Jamis2号を点検に持ち出した。
事故後初めて愛車を眺める。
俺の体が、大部分の衝撃を受けたことで自転車のダメージは、ないように見える。
少しの汚れを拭き掃除して、タイヤの空気圧を整えて自宅を出ようとする。
その通り。
どれほど気の毒に思ってみてもその人自身でなければ痛さなど知れようがない。
今回の怪我の衝撃は、形容の言葉を持たないほどであった。
そして相当の痛みを生んだ。
路面に投げ出され蹲うずくまる。
最初の行動は、車の往来。
自分の位置は、センターライン近く。
対向車に轢かれる心配は、なさそう。
同じ車線の後続は?
少し間をおいて停車してくれている。
目をつむり一度息を整える。
頭に浮かんだのは、生きてるな。
路面に投げ出され蹲うずくまる。
最初の行動は、車の往来。
自分の位置は、センターライン近く。
対向車に轢かれる心配は、なさそう。
同じ車線の後続は?
少し間をおいて停車してくれている。
目をつむり一度息を整える。
頭に浮かんだのは、生きてるな。
その刹那の痛みが最高値。
千歳市立病院に搬送検診後、帰札。
その夜は、自宅の布団に寝ることが出来ずにソファに座り寝た。
痛み止めの手は借りず。
病院でも
「我慢しないでくださいね、飲み薬が嫌なら座薬がありますから。」
看護師が何度も言う。
大層な我慢などしていない。
痛みを感じない体質なのだろう。
それとも日ごろの運動のお陰か。
新ヘルメット |
昨日9月25日は、
事故から丸1ケ月が経ちプラス1日目。
肋骨は、体を左右に
大きく捩じるまでは至らずも、
プチプチもなく少しの違和感を感じる位。
大きく捩じるまでは至らずも、
プチプチもなく少しの違和感を感じる位。
鎖骨も肩下までの稼働なら
相当に使えるまで回復を見ている。
相当に使えるまで回復を見ている。
来たるべく自転車復帰のために
Jamis2号を点検に持ち出した。
事故後初めて愛車を眺める。
俺の体が、大部分の衝撃を受けたことで自転車のダメージは、ないように見える。
少しの汚れを拭き掃除して、タイヤの空気圧を整えて自宅を出ようとする。
手押しで行くつもり。
その時、「ジジィ、乗ってみたらどうよ。」と愛車が囁いている。
そぉっと跨って見た。
あ~あ、
至極、極楽、天国、快楽。
2019年9月21日土曜日
俺のボルトは9本。
頭の反対に尻尾がある。
お昼の反対に夜があり、
夜明けの朝と日の沈む日の入りは、それぞれの入り口出口となる。
入院生活でその両方を眺められた。
札幌市の日の入りは、藻岩山~手稲山辺りとなる。
眺める位置と季節でその位置は、違たがう。
病院5階の窓からだと藻岩山に落ちて行く。
ただ病院と藻岩山との距離が近すぎで余韻と言うやつがない。
瞬く間に落ちて行く。
落ちてからの夕焼けも見える範囲が狭く時間も短い。
それに比べると日の出は、随分と楽しませてくれた。
部屋の窓から眺めることができた。
4時30分を過ぎてから東の空が白んで来る。
そして空の機嫌が良ければ徐々に茜色に染まり始める。
ふと考える。
夕焼けと朝焼けにどんな違いがあるのだろう?
検索してみると濃さに違いがあるという。
日中太陽で温められた空気には、チリが混じり上昇する。
その大気を通すと赤色が濃くなるのだそうな。
退院をする前の晩、同室の工業大学生に朝焼けがよく見える話をした。
彼は、去年の夏に左足の骨折で入院。
今回は、その時に入れたプレート除去をするための再入院をした。
プレート除去に一年を経過したのは、大学受験との絡みからだという。
彼も同じく明日退院というタイミング。
「明日の朝起こしてください。」
「了解。」
お昼の反対に夜があり、
夜明けの朝と日の沈む日の入りは、それぞれの入り口出口となる。
入院生活でその両方を眺められた。
札幌市の日の入りは、藻岩山~手稲山辺りとなる。
眺める位置と季節でその位置は、違たがう。
病院5階の窓からだと藻岩山に落ちて行く。
ただ病院と藻岩山との距離が近すぎで余韻と言うやつがない。
瞬く間に落ちて行く。
落ちてからの夕焼けも見える範囲が狭く時間も短い。
それに比べると日の出は、随分と楽しませてくれた。
部屋の窓から眺めることができた。
4時30分を過ぎてから東の空が白んで来る。
そして空の機嫌が良ければ徐々に茜色に染まり始める。
ふと考える。
夕焼けと朝焼けにどんな違いがあるのだろう?
検索してみると濃さに違いがあるという。
日中太陽で温められた空気には、チリが混じり上昇する。
その大気を通すと赤色が濃くなるのだそうな。
退院をする前の晩、同室の工業大学生に朝焼けがよく見える話をした。
彼は、去年の夏に左足の骨折で入院。
今回は、その時に入れたプレート除去をするための再入院をした。
プレート除去に一年を経過したのは、大学受験との絡みからだという。
彼も同じく明日退院というタイミング。
「明日の朝起こしてください。」
「了解。」
彼の脚の骨を固定していたプレート |
2019年9月20日金曜日
偉そうな態度の奴と媚びた奴。
最終入院していた病室は、5階で東に面した窓を持つ。
全三つの部屋に移動した。
最初の部屋は、同じ階の同じ並び。
俺は、入口ドアのすぐ右スペースを宛がわれる。
すぐ隣に20歳台と思しき若い衆、そしてドアの左に50歳代の人。
俺は、人見しりする。
小人時代に道を歩いて知り合いに出会うことが怖かったくらい。
こんにちはと一言が言えない。
挨拶をしなければいけないことは、よ~く理解出来ているから
挨拶の出来ないことを大いに恥じていた。
長じてからは、反対にすっと入り込む術を身につけた。
か、胸のランプが点滅して今にも燃料切れで崩れ落ちそうな状態。
既室者に軽口の一つもほざいてすぐに馴染めるほど心身は充実していない。
「失礼します。」弱弱しい声を発しただけ。
後は、背中や足の勾配を調整して座りのいい角度のベットに
身を横たえて獏と時間を喰らうのみ。
昼の時間は、院内全体が活動している。
同室の二人もガンダムを作ったりTVを観たりと思い思いに過ごしている。
少なくても居ずらい空間ではなかった。
隣の若い衆が4日ほど退院してゆく。
入れ替わりで斜め向かいに俺と同じ年配者が入ってきた。
腰痛で歩行困難らしい。
事あるごとに「いてててて、」と弱弱しく悲鳴する。
そして看護師との会話の中で「イヒヒヒヒ、」と媚びた笑い声を出す。
俺は、嫌いなのだ。
全三つの部屋に移動した。
最初の部屋は、同じ階の同じ並び。
俺は、入口ドアのすぐ右スペースを宛がわれる。
すぐ隣に20歳台と思しき若い衆、そしてドアの左に50歳代の人。
俺は、人見しりする。
小人時代に道を歩いて知り合いに出会うことが怖かったくらい。
こんにちはと一言が言えない。
挨拶をしなければいけないことは、よ~く理解出来ているから
挨拶の出来ないことを大いに恥じていた。
長じてからは、反対にすっと入り込む術を身につけた。
か、胸のランプが点滅して今にも燃料切れで崩れ落ちそうな状態。
既室者に軽口の一つもほざいてすぐに馴染めるほど心身は充実していない。
「失礼します。」弱弱しい声を発しただけ。
後は、背中や足の勾配を調整して座りのいい角度のベットに
身を横たえて獏と時間を喰らうのみ。
昼の時間は、院内全体が活動している。
同室の二人もガンダムを作ったりTVを観たりと思い思いに過ごしている。
少なくても居ずらい空間ではなかった。
隣の若い衆が4日ほど退院してゆく。
入れ替わりで斜め向かいに俺と同じ年配者が入ってきた。
腰痛で歩行困難らしい。
事あるごとに「いてててて、」と弱弱しく悲鳴する。
そして看護師との会話の中で「イヒヒヒヒ、」と媚びた笑い声を出す。
俺は、嫌いなのだ。
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