2020年7月22日水曜日

闘争心

戦と闘
いづれもたたかうと読む。

たたかうは、勝ちを争うこと。
同じ意味なのだが、はて?

漢字の成り立ちを見る。
戦は、
単と戈。
単は、弾弓を表す。
弾弓とは、球を射る弓。
戈は、矛ほこ
武器を表す二つの漢字から成る戦う。
勝ち負けを決する行為。

では、
同じたたかうでも二人が争う局面のよう。
つぶれることのないように心を奮いたたせる様子、
精神的な意味も加味されているようだ。

その闘う顔。
北海道コンサドーレ札幌キャプテン宮澤裕樹。

2020年7月18日・J1リーグ第5節対仙台戦。
試合が始まる。
攻めるコンサ。
仙台は、コンサの攻撃をかわしカウンターで前半23分に先制。

アシストは、仙台 関口訓充34歳。
2004年帝京高校からJ2仙台に参入。
ポジションは、MF。
2010年に仙台J1昇格の推進力となる。
その後
2013年~2014年を浦和。
2015年~2017年をC大阪。
2018年から仙台に戻る。

2010年と2011年に日本代表Aマッチに3試合出場。
身長は、171Cm。
豊富な運動量と読み。
一言で表現するとクレバーでアグレッシブなプレイヤー。

そのクレバーに荒野が嵌められた。
相対のポジション関口VS荒野。
開始早々からバチバチと削り合っていただろうと試合を見直してみた。
レッドカードの場面まで局面の激しい接触プレーは、無し。
TVに映っていないところでプロローグがあったのか?
前半32分に局面でもみ合う。
先に立ち上がった荒野が関口に軽くケリを入れる。
口汚く罵られたのか?
当人たちのコメントがないので真相は、判らず。
野が嵌められ切れたと見える。

主審が真後ろで見ていた。
一発レッドで退場。
先制された上に一人欠けたコンサ。

シャドー駒井を一段下げて荒野の穴を補う。
前は、ドドとチャナの2トップ。
コンサは、ゴール前にボールを運び
プレッシャーをかけるも得点の匂いを消されている。
そんな札幌の重いゲーム前半が終了。

窓に映る陽



何かを起こす。
ペドロヴィッチのフツトボール哲学は、攻撃に徹すること。
攻めの舵を取り続けるリーダー。

人が湧き出てくる。
マークが付きづらいゲーム運び。
ボールも人も動く。
相手は、それ以上に動かされる。
徐々に疲労を重ねさせられる対戦相手。
これが基本。

その基本を作るために練習では、11対11の紅白戦を多用する。
お互いが同じフォーメーション。
ドリブル禁止・リターン禁止・ワンタッチパスの制約をする。
これが身体的にもきつい。
瞬時にボールを渡すために受けられる選手がどこにいるかを把握しなければならない。
受け手は、パスが出しやすいように位置を取らなければならない。
前に、前にボールを運びゴール確率を高める動きを磨く。
脳みそも鍛えられる。

右サイドバック白井に代えてルーカス、
ボランチ深井に代えて田中投入。
2枚替えで後半突入。
ルーカスは、ドリブル突破と危険なクロス。
田中には、高さのプラス。


コンサは、仙台と同じ体験を2017年7月29日浦和戦で経験している。
前半32分に福森からのCKを
DF槙野のマークをかわして都倉ヘッドで先制。
その後39分に都倉と槙野のもみ合いから都倉イエロー。
そして槙野は、レッド退場。

この場合は、今回の関口の役回りが、都倉。
そこに至るまでに数度の局面接触あり。
レッドの前にも
審判の見えない場所で槙野がアクションしている。
引き倒して起き上がりざまに
左足で顔面に蹴りを入れた。
なでた程度なので都倉に強い衝撃はないはず。
だが、満面を手で覆い脚をバタ付けせて痛みに耐えている風を装っていた。

その後の一発レッドは、槙野が両手を使い都倉を引き倒した場面。
これは、審判に見られている。

前半を札幌1-0で折り返す。
後半浦和ミシャは、果敢に3枚替え。
しかし、交代で入ったDF那須がその4分後負傷退場。
浦和は、二人も少ない9人でゲームを進めることになる。
だが、札幌ドームは、二人も少ない浦和の攻撃に
恐怖の40数分を経験することになる。

今回の仙台戦との違いは、小野伸二がピッチにいたこと。
63分にチャナに変わりJay投入。
更に73分に都倉に代えて小野伸二。
Jayは、この年の夏ウィンドーで札幌入りしたばかり。
四方田監督は、前線でJayの高さを活かしたかった。
伸二は、ゲームを読み冷静にゴール前のJayに浮きパスを入れる。
Jay難なくヘッドゴール。
2-0
これで浦和の息の根を止めた。
が、9人で11人と互角を戦うミシャ浦和は、
コンサのイレブンに強烈な印象を残した。
この年低迷していた浦和。
これを最後にミシャは、浦和を切られている。
そして野々村は、ミシャ獲得に動きだす。
その年の最終戦でJ1残留を果たした四方田監督に
ペドロピッチの下で今一度コーチを要請する。
ペドロビッチには、5年後の優勝を設計依頼。
こうして2018年からミシャ札幌が誕生した。

仙台戦に戻る。
徐々にゴールの匂いが漂ってきた。
コンサは、3年間積み上げてきた攻めるサッカーの密度を上げてくる。
ここで手薄になった守りを掻い潜り仙台後半15分に2点目を獲得。
仙台にとっては、プラン通りの展開。
仙台は、勝ちを意識した。
一人多く2点リードの仙台。
勝ちの確率は、蔵王連峰ほど高く強固に思えた。

仙台が疲弊してきた。
が、その2分後ルーカスが期待通りのクロスをゴール前に送る。
この時、上がってきた進藤から受けたルーカスは、ノーチェック。
ルーカス、ゴール前の動きを確認。
チャナは、スペースを見つけてDF裏に位置取り。
優しい山なりドンピシャのクロス。
158cmの短躯でもフリーならヘッドで決められる。
チャナティップ、ゴール。
一人少ないにもかかわらず危険な複数エリアで相手フリーにさせてしまう仙台。

1-2となって仙台怯えを覚える。
怯えは焦りとなり守りを優先させたい気持ちが強くなる。
後半25分この日初めて先発のトップ、ドドをJayに交代させた。

よくここまでJayを待機させ我慢したと思う。
後半折り返しで出さず、このタイミングまで戦況を図っていたミシャ。

仙台もチャンスを得るが、
札幌は、荒野の穴を埋める黄色カードで凌ぐ。

後半だけで4枚の黄色をもらっている。
ファールがよい事とは思わない。
が、諦めない姿勢がそこにあった。
それは、昨年のルヴァンカップで得た勝者のメンタル。
準優勝ではないか、負けではないのか?

いや負けなかったのだ。
サッカーでPK戦となった場合ゲーム公式記録は、引き分けとなる。
試合時間以内に決着はつかなかった、引き分けゲーム。
が、どちらかにカップを渡さなければならないので便宜上PK戦を行っている。

北海道コンサドーレ札幌の歴史上ベストな試合をルヴァンカップで経験した選手たち。
諦めなければ何かを起こすことが出来る。
そう信じることの出来る選手たちに成長している。

ここでこの日一番いいものを見せてもらった。
90分、宮澤のミドルシュートからCK獲得。
ゴール前に準備する宮澤裕樹の表情がアップされた。
奮い立つ男。
極限の武者顔。
内に沸き立つ闘志を身体一杯に込めて見開く目。

宮澤裕樹31歳コンサ一筋13年。
好きで13年いさせてくれるほどプロは甘くない。
コンサドーレに必要な選手として13年間在籍している。
北海道のサッカー名門校室蘭大谷高校で活躍し
ビッグチームからのオファーも複数あったそうな。
が、地元クラブJ2コンサドーレ入りを決めた。
以来J2からJ1を通じて366試合出場している。
コンサドーレの柱となった。

もう若い選手ではない。
どの位残るかわからないプロサッカー現役生活。
あのルヴァンカップ以来彼は、刹那を燃え尽きようとしている。
一瞬を諦めず、燃やし続ける炎。
その表情をカメラは、その後も数度捉えている。

そこがチームに伝播したのか。
いや、ピッチ立つ全員が諦めの気持ちなど微塵も持ち合わせていない。

アデショナルタイム突入。
ゴール右からのCK.
キッカーは、ルーカス。

何度も、何度も襲い掛かられている仙台。
札幌は、執拗にゴールを求める。
仙台の疲弊は、ピークに達していた。

ここで田中の高さが活きた。
ルーカスのキック寸前に田中がゴール前に分け入る。
仙台DFが釣られる。

もっとも注意すべきJayをフリーにしている。
田中が作った僅かなスペースにJayが飛び込む。
そこにボールが運ばれた。
Jay、枠にコントロールは出来ない。
が、ゴール前の田中の足元にヘッドで叩きつけた。
ボールは、田中の右足首を経て軌道を修正しゴールに転がり込む。

セットプレイは、四方田コーチの領域。
田中の足を経てゴールは、計算外ながら日ごろのトレーニングが実った。
そしてそれは、闘争心。
日ごろのトレーニングで得た体力が、闘争心を支えている。

対する仙台は、ここで負けたくない気持ちを強くした。
あと5分残る試合。
数度チャンスを迎えている。
が、攻撃の厚さがない。

後ろの選手が駆け上がらない。
こうなるとチャンスの女神は、裾を揺らして逃げて行く。
仙台にゴールは生まれない。
ドロー終了。

仙台は、負けに等しい引き分け。
札幌は、再開の4戦アウェイを2勝2分け負けなし。
逞しく育ってきたコンサ戦士。
逞しさは、精神と肉体と技。
精神を強くするのは、勝ち。
勝つ毎にそれは、育つ。
一つの勝ちを重ね、また勝ちを重ね。
逞しさはそうして育つ。

だからと言ってJリーグ制覇は、間近ではない。
やっと5位以内を確保できる程度だろう。
そこからの一段ずつが遠い。
我々は、そこに進んでいる実感を目の当たりにしている。
サポーータ冥利がそこにある。

今宵、待ちに待ったホーム開幕。
相手は、優勝候補FC東京。


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