私はももたん
おかあたんも、おとうたんも、バーバ、ジージも
ももたんのことを「ももたん」と呼びます。
ジィージが影を見てごらんと言います。
「小さくなっているです。」
ももたんは足元から伸びている自分の影が短くなっていることに気が付きました。
「お日様の光が沢山当たるようになってきたんだぞ。」
家の前の道路にアスファルトが顔を出し始めました。
そして庭に積もった雪にあのシャランを見つけました。
太陽の熱で溶けだした雪が、
小さなつららとなりそれが鎖のように幾重にも繋がります。
首飾りの細工のようです。
キラキラ輝いています。
そ~おっと手に取ろうとするのですがもろくも崩れてしまいます。
崩れるときに微かな金属音がします。
ももたんには、”シャラン”と聞こえます。
スプリングエフェメラルの一つ紫延齢草 |
三月は、ももたんの大好きな月です。
お誕生日があってお雛様があって
そしてシャランがあるからです。
シャランを見つけると、森林公園のお散歩をおねだりします。
その日は、お父さんとお母さんがお休みの日で三人でお散歩しました。
公園の日当たりのいい場所にもたくさんのシャランが出来上がっていました。
結婚式の写真に写っていたお母さんの胸の首飾りのようです。
お日様が暖かくてシャランが輝いておとうたん、おかあたんが一緒で
ももたんは、うれしくて、楽しくて。
「きゃははは」と笑いました。
そんな日は、もうひとつ大きな喜びが待っています。
キラキラのあの子です。
あの子もやってきました。
三角の帽子をかぶり手に星のついたスティックを持っていて、
ひゅるるる~と空を飛びます。
スティックを一振りすると森の匂いが広がります。
ももたんが「きゃははははぁ」と笑うと
キラキラちゃんもにこにこする。
「きゃははははぁ」
「にこにこ」
「きゃははははぁ」
「にこにこ」・・・・・
春のキラキラちゃんは、木々の枝先の蕾を膨らませます。
雪の下のスプリングエフェメラル達にそろそろ目覚めなさいと伝えます。
エフェメラル:ephemeralは、儚はかないという意味で
春先に咲く小さな草花は、そう呼ばれています。
春の妖精とも言われます。
キラキラちゃんのスティツクで木々の香りも一層濃くなりました。
ももたんは、香りにつつまれて夢心地です。
「キラキラちゃんがきていまつ~!}
お父さんには、見えないようで不思議そうな顔でももたんを眺めています。
お母さんは、「そう、キラキラちゃんがきてるんだね。」
今は、見えないけれど小さい時に見えていたと言いました。
たくさん歩いて、たくさん楽しんで。
お母さんが、「そろそろ帰ろう。」
ももたん「うん、」
お父さんは、「疲れたか?」
ももたん、「はい~っ!」
「肩車するか?」とお父さん。
「ありがとございまつ」
「キラキラちゃんまたね~。」
キラキラちゃんに手を振りお別れのご挨拶をして
お父さんの肩に乗せてもらいました。
お母さん、「帰ってココア飲もうか?」
「はい~っ!!、肩車、肩車、ココア、ココア・・・」