私はももたん
おかあたんも、おとうたんも、バーバ、ジージも
ももたんのことを「ももたん」とよびます。
キラキラさんがもうすぐ冬ですよ~、と知らせてくれたけど雪が降りません。
ももたんの大好きなそり遊びが出来ません。
でもお気に入りの羊のオーバーオールを着て外をお散歩します。
そんな時は、ジージが一緒です。
「ももたん、お散歩行くか~?」
「は~い、いきまつ~。」
公園で小鳥さんたちの声を聴きます。
たくさん、たくさんさえずりが聞こえます。
ものすごい速く打ち鳴らす森のドラマーもいます。
おっきなカメラで何かを写そうとしている人が居ました。
「コンニチハ~。」
「今日は、」
「なにしているでつ~?」
「シマエナガを撮っているいるよ。」
「白いちっちゃい、もこもこの小鳥さん?」
「そう、松の中に隠れて探すのが難しいんだよ。」
「お写真で見ました~。
スズメさんより小さいってジージが教えてくれました。」
「そうなんだ、樹の中でじっとしていてくれればいいんだけれど
カメラを向けるとすぐ逃げてしまうしね。」
「うまくできるといいでつ~。」
「ありがとう。」
「サヨオナラ。」
「さようなら。」
画像 写真AC
「ももたん、今日は。」
散歩中の人たちが声を掛けてくれます。
「コンニチハでつ~、お元気でつか~?」
「はい、ありがとう。ももたんは?」
「はい、ありがとうでござります。お元気でつ~。」
たくさん歩きました。
するとジージが
「帰ってココアにしようか?」
「はい~っ。」
家ではバーバがココアの用意をして待っています。
「ただいまでつ~。」
「お帰り。」
「さ、オーバーオールを脱いで手を洗っておいで。」
ももたんは自分でオーバーオールを着ることが出来ます。
そして脱ぐことも。
でも壁に架けられませんでした。
ジージがかけてくれていました。
「ももたんも自分でしたいでつ~。」
「そ~か、自分でしたいか。」
ジージは、ももたんでも掛けられるように
低い処に新しいフックを付けてくれました。
だからオーバーオールをハンガーに通しフックに引っ掛けることが出来ます。
ジージは、ニコニコしながら見守っています。
洗面所を低くすることは、出来ません。
そこで台が備えてあります。
台にのって水道のレバーを押し上げて手を洗います。
レバーを上まで揚げると水が勢いよく出てきます。
洗面台で撥ねてももたんの胸や顔がビチョビチョの濡れ濡れ。
たくさん出てこないようにこぶしでトントンして調整します。
教えてくれたジージは、それを見ながら
「ももたん、偉い!!」
と褒めてくれます。
ももたんは、うれしさと照れくささとを
「えへへ~。」と笑いで応えます。
終わったら洗面器の隣のタオルで手を拭いてお終い。
「バーバ、できたよ~。」
テーブルの前に座ります。
「はい、ココアもできました。今日はアップルパイを作りました。
召し上がれ。」
「♬アップル~アップル~、アップル~~~パイ。」
ももたん作曲の歌が出ました。
「いっただきま~つ!」
ももたん専用のマグカップにやけどをしないように適度な温度のココア。
マグカップは、陶器で出来ています。
ももたんが自分で選びました。
少し重いのですが羊の絵が付いています。
「♬アップル~アップル~、アップル~~~パイ。」
歌いながら食べながら
「おいし、バーバありがとう~ございまつ、です。」
「どういたしまして、寒くなかった?」
「うん、」
「最近は、厳しい寒さが無くなってしまった。」
ジージが昔の話を教えてくれました。
「ジージの子供の頃は、お風呂屋さんに行ってたんだ。
帰り道にタオルを下に垂らすとたちまち凍ってタオルの棒が出来る。
それを刀にしたりバットにしたりして遊んだもんだ。」
「へぇ~!」
「家の中も寒くってな。」
「ストーブは?」
「石炭のストーブがあったけど、隙間だらけだったからな。」
「そうそう、ストーブの壁が真っ赤に染まってその周りは熱かったわねぇ。」
「俺は、壁との間に入ってストーブに当たるのが好きだった。」
「濡れた手袋をストーブに付けた湯沸かし器の蓋の上に置くとたちまち乾いたな。」
「そうだ、トイレは汲み取り式だった。」
「寒かったのよ。」
「うんちやおしっこが重なって逆さのつららになる。」
「あぶないでつ~。」
「そう、お尻に刺さるといけないからつらら折りハンマーで先を叩く。」
「ウンチの前にハンマーで叩く?」
「そうだ。」
「楽しそうでつ~。」
「外に出かけるとき男の子は、ちいさなハンマーを腰にぶら下げていた。」
「なにに使うでつ?」
「外でオシッコをするとたちまち氷の滝が出来る。」
「チンチンから?」
「そう、そのままにしておくと迷惑になるから腰のハンマーで折る。」
「すごいでつ~、ももたんもしたいでっつ~!!」
「女の子は、直ぐ雪の中に隠れてしまうからチッチのアーチが出来ないぞ。」
「いつかできるかもしれない。ハンマー欲しいでつ~。」
次の日ジィージが近所のトーイスーパーに連れて行ってくれました。
そしてピコピコハンマーを持つことが出来ました。
小さい方のハンマーです。
ももたんは、チッチハンマーと呼んでいます。
もももたんの腰に下げるととても大きなものです。
歩く度にハンマーが振れています。
「歩きづらいだろう。」
「軽いから平気でつ~。」
樹に近づいてピコ。
壁にピコ。
電信柱にピコ。
いつも出会う犬のロッキーにピコ。
ロッキーは、ワンと吠えました。
そして悲しそうな顔をしました。
ロッキーのおばちゃんが、「おやおや、」と言いました。
ジージが
「おもちゃのハンマーでも生き物をむやみに叩いてはいけない。」
ロッキーの悲しそうな顔を見てももたんも悲しくなりました。
「ローキーごめんなさい。」
ロッキーは、ワンと応えました。
夜になると雪がたんと降ってきました。
「やっと深い雪になりそうだな。」
おとうたんがお風呂で話してくれました。
「そり遊びが出来る?」
「そうだ、ラッセルもできるな。」
そしたら公園でキラキラさんにハンマーを見せてあげよう。
※ジィージの小さい頃は、本当にトイレの中に逆さつららが出来ました。
でもハンマーで叩くことはありませんでした。
もちろんおしっこの氷滝も出来ません。