寝たのは、11時。
鳴る4時30分寸前に目覚める。
セットした直前に起きる、と自分に暗示をかけている。
できた時は、気持ちいい。
大きく伸びをして急ぎで支度を始める。
「おはよう」
「おはよう」
「自分で起きてくるのが偉いね。」
母が褒めてくれる。
「お兄ちゃん二人は、何度も起こさないと起きてこなかったしょ。」
好きな母にあまり世話をかけないようにしている。
恥ずかしいのでそうは言わずに「ああ」と応じた。
朝食を済ませて歯磨きをして、
母が用意してくれたおにぎりを40Lリュックに詰める。
「今日は、土曜日だから早く帰れるんでしょ?」
「うん、だぶん、行ってきま~す。」
「行ってらっしゃい。」
右膝下内側がギアのオイルで汚れるので
札幌ふれあいの森駐車場を過ぎる。
まもなく滝野すずらん公園入口の一つ鱒ます見口に差し掛かる。
ここからは、急坂。
ギアは下げケイデンスを100台に上げる。
ここを時速20kmを落とさずに登り切るのが僕の目標。
でも背中の荷物がそうさせてくれない。
アシリベツの滝で一旦平坦になってから
もう一段キツイ短い登りが待っている。
ああ~、見えた。
前方にゆらゆらと自転車の動き。
大きなリュックを背負っている。
「ゴリ~!!」
ゴリが振り返る。
一段奮起した様子。
でも距離が縮まる。
「ゴリ、おはよう~」
「ウィ~ス!!」
ゴリを抜く。
懸命に付こうとしている。
そりぁ無理だって。
ゴリに脚力があっても自転車の性能がまるで違うんだから。
滝野霊園のモアイ像列で峠となる。
鱒見口からモアイまで3.3km。
モアイ像でゴリを待つ。
これからは、下り。
身体が冷える。
ウィンドブレーカーの裾を前に戻す。
汗が引くまで胸は少し開いておく。
追いついたゴリにもそう伝えた。
「何時に出た?」
「昨日言ったとおりに5時丁度」
「そうか差し引きしても20分で追いつかれているのか。
やっぱ、はえ~。」
再び走り始める。
駒岡の清掃工場横~澄川〜真駒内~中之島と走る。
信号待ちでゴリが頼みがあると言った。
「ロードバイクを見に行くから帰り一緒してくんね。」
鳴る4時30分寸前に目覚める。
セットした直前に起きる、と自分に暗示をかけている。
できた時は、気持ちいい。
大きく伸びをして急ぎで支度を始める。
「おはよう」
「おはよう」
「自分で起きてくるのが偉いね。」
母が褒めてくれる。
「お兄ちゃん二人は、何度も起こさないと起きてこなかったしょ。」
好きな母にあまり世話をかけないようにしている。
恥ずかしいのでそうは言わずに「ああ」と応じた。
朝食を済ませて歯磨きをして、
母が用意してくれたおにぎりを40Lリュックに詰める。
「今日は、土曜日だから早く帰れるんでしょ?」
「うん、だぶん、行ってきま~す。」
「行ってらっしゃい。」
右膝下内側がギアのオイルで汚れるので
野球パンツのストッキングを膝までたくし上げる。
自転車用のグローブをはめる。
ヘルメットをかぶる。
車庫の内壁にかけた自転車を下ろす。
バイクに跨りスタートさせた。
身体が目覚めるまでは、抑えて走る。
5時少し過ぎに日の出の時間。
まだ日は、登っていないけれどすでに辺りは、明るさを取り戻している。
東空の茜色が徐々に濃くなる。
紫色の帯が狭くなる。
少し肌寒い。
ユニフォームの上にウィンドブレーカーを着る。
ゴリは、もう先を行っているのだろうか?
羊ヶ丘通りホーマック前交差点を右に折れる。
ここからは、ごくなだらかな登り基調。
白旗山競技場へつながる交差点辺りで
ウィンドブレーカーの前を開けて後ろ腰に回す。
母に裾に小さなマジックテープを縫い付けてもらった。
自転車用のグローブをはめる。
ヘルメットをかぶる。
車庫の内壁にかけた自転車を下ろす。
バイクに跨りスタートさせた。
身体が目覚めるまでは、抑えて走る。
5時少し過ぎに日の出の時間。
まだ日は、登っていないけれどすでに辺りは、明るさを取り戻している。
東空の茜色が徐々に濃くなる。
紫色の帯が狭くなる。
少し肌寒い。
ユニフォームの上にウィンドブレーカーを着る。
ゴリは、もう先を行っているのだろうか?
羊ヶ丘通りホーマック前交差点を右に折れる。
ここからは、ごくなだらかな登り基調。
白旗山競技場へつながる交差点辺りで
ウィンドブレーカーの前を開けて後ろ腰に回す。
母に裾に小さなマジックテープを縫い付けてもらった。
簡単に留められる。
この辺りから徐々に斜度が付く。
まもなく市立真栄高校が左に見えてくる。
この道は、清田から南区に抜ける裏道。
この辺りから徐々に斜度が付く。
まもなく市立真栄高校が左に見えてくる。
この道は、清田から南区に抜ける裏道。
普段でも交通量は、少ない。
脇道も信号も少ない。
脇道も信号も少ない。
走りやすさからかロードバイクやランニングの人がよく利用している。
小さな峠があるのも利用者の多い理由だと思う。
小さな峠があるのも利用者の多い理由だと思う。
歩道を走る人がいた。
「おはようございま~す。」
抜き際に挨拶をする。
「おはようございます。」
完全に長距離選手の体形。
スリムで足も細い。
足の運びは、軽やか。
束ねた髪が左右に揺れている。
「おはようございま~す。」
抜き際に挨拶をする。
「おはようございます。」
完全に長距離選手の体形。
スリムで足も細い。
足の運びは、軽やか。
束ねた髪が左右に揺れている。
胸を張りスライド走法。
見るこちらも気持ちがいい。
体は、暖まった。
心拍数は、110bpm台くらいだろうか。
90のケイデンスをそのままにリアギアを一段上げる。
増すスピード。
※ケイデンスとは?
1分間に回すペダリング数。
一回転して1回のカウントとなる。
単位は、rpm。
有明小学校を過ぎる。
前方に恵庭岳が見える。
アイヌ語でエエンニワが語源だと小学校で聞いた。
体は、暖まった。
心拍数は、110bpm台くらいだろうか。
90のケイデンスをそのままにリアギアを一段上げる。
増すスピード。
※ケイデンスとは?
1分間に回すペダリング数。
一回転して1回のカウントとなる。
単位は、rpm。
有明小学校を過ぎる。
前方に恵庭岳が見える。
アイヌ語でエエンニワが語源だと小学校で聞いた。
頭が尖った山の意味。
その鋭角な頂上近くには、まだ雪が残っている。
札幌ふれあいの森駐車場を過ぎる。
まもなく滝野すずらん公園入口の一つ鱒ます見口に差し掛かる。
ここからは、急坂。
ギアは下げケイデンスを100台に上げる。
ここを時速20kmを落とさずに登り切るのが僕の目標。
でも背中の荷物がそうさせてくれない。
アシリベツの滝で一旦平坦になってから
もう一段キツイ短い登りが待っている。
ああ~、見えた。
前方にゆらゆらと自転車の動き。
大きなリュックを背負っている。
「ゴリ~!!」
ゴリが振り返る。
一段奮起した様子。
でも距離が縮まる。
「ゴリ、おはよう~」
「ウィ~ス!!」
ゴリを抜く。
懸命に付こうとしている。
そりぁ無理だって。
ゴリに脚力があっても自転車の性能がまるで違うんだから。
滝野霊園のモアイ像列で峠となる。
鱒見口からモアイまで3.3km。
モアイ像でゴリを待つ。
これからは、下り。
身体が冷える。
ウィンドブレーカーの裾を前に戻す。
汗が引くまで胸は少し開いておく。
追いついたゴリにもそう伝えた。
「何時に出た?」
「昨日言ったとおりに5時丁度」
「そうか差し引きしても20分で追いつかれているのか。
やっぱ、はえ~。」
再び走り始める。
駒岡の清掃工場横~澄川〜真駒内~中之島と走る。
真駒内までは、下りの高速コース。
僕は、スピードを抑えてゴリを引っ張る。
その先も下り基調だが交通量が増える。
信号も多くなる。
Stop and go の繰り返し。
信号待ちでゴリが頼みがあると言った。
「ロードバイクを見に行くから帰り一緒してくんね。」
実家にねだったのだという。
今日は、土曜日で授業は昼まで、その分練習も早めに終わる。
快諾した。
ゴリがロードに乗ると速いだろう。
僕も思いっきり走ることができる。
6時に学校に着いた。
朝練前は、1年生の仕事が少ない。
体力トレーニングのコーンやマーカーを配置するくらい。
2年生に教えてえてもらいながら設置してゆく。
次から15分遅く家を出ようかな。
いや、このくらいの余裕があったほうがいいか。
約90分の朝練は、ランニングなど基礎体力トレーニングが中心。
最初に全体でストレッチ。
そしてグラウント6周。
最初の一周は、軽く流して体を温める。
二週目からインターバルトレーニング。
一塁ベースからの30mくらいを全力疾走。
外野で呼吸を整えながら軽く流す。
レフトフェンスからの30m位を再度全力疾走。
3塁くらいから軽いジョキングの繰り返し。
僕は、トレーニングを全力でこなす。
練習は、100%。
本番は、80%と決めている。
今日は、土曜日で授業は昼まで、その分練習も早めに終わる。
快諾した。
ゴリがロードに乗ると速いだろう。
僕も思いっきり走ることができる。
6時に学校に着いた。
朝練前は、1年生の仕事が少ない。
体力トレーニングのコーンやマーカーを配置するくらい。
2年生に教えてえてもらいながら設置してゆく。
次から15分遅く家を出ようかな。
いや、このくらいの余裕があったほうがいいか。
約90分の朝練は、ランニングなど基礎体力トレーニングが中心。
最初に全体でストレッチ。
そしてグラウント6周。
最初の一周は、軽く流して体を温める。
二週目からインターバルトレーニング。
一塁ベースからの30mくらいを全力疾走。
外野で呼吸を整えながら軽く流す。
レフトフェンスからの30m位を再度全力疾走。
3塁くらいから軽いジョキングの繰り返し。
僕は、トレーニングを全力でこなす。
練習は、100%。
本番は、80%と決めている。
10本連続インターバルトレーニングは、キツイ。
3年生の集団が先頭だったが徐々に早い組と遅い組に分かれてくる。
僕とゴリは、3週目で先頭の集団に追いついていた。
ゴリは、6周目まで先頭集団の前。
僕は、その集団後ろに辛うじて付けていた。
終了すると吐き気を催す1年生がいた。
マネージャーがビニール袋を手渡している。
僕は、膝に手を置き背中で息をした。
そのあとは、サーキットトレーニング。
脚力だけでなく腹筋、体幹、背筋、腕と体全体のトレーニングに入る。
ピッチャーは、のびやかに伸縮する筋肉があればいいと思っている。
だから器具を使ったウエイトトレーニングは、しない。
ただ、自分の体の重さを負荷にする筋トレは、必要。
ここでも練習100%でやり切る。
8時00分に朝練終了。
用具の片づけをして汗を拭きアンダーを取り換える。
制服に着替える。
部室のロッカーは、汗の匂いが充満している。
夏になるとどんな匂いに変化するのだろう。
少し怖い気がする。
始業時間は、8時35分
ショートホームルームが10分程度。
そして1時限目が始まる。
ゴリと僕は、教室が違う。
一緒だったら良かったのにとゴリが言う。
今日は、4時限で終了。
13時30分から練習が始まる。
本格的な練習になると使用する用具も多くなる。
先輩に教えてもらいながら用意をする。
ゴリが先頭に立って動き声をかけている。
僕もゴリの音頭にのり手伝う。
「ルーは、やらなくてもいいんでないの。」
「やっぱり僕もしなくちぁ。」
ゴリは、一瞬考えてから「そうだね。」
準備運動をする。
マネージャーからキャッチボールの組を知らされる。
3年生キャチャーの盛岡先輩が相手。
キャッチボールは、野球の基礎。
軽く挨拶をする。
最初は、短い距離から軽く投球。
肩を慣らして徐々に長い距離をとる。
キャッチャーは、立ったまま。
今日は、マウンドから3mほど離れたくらいの距離で遠投だけ。
「白石~、変化球は?」
「僕は、真っすぐとチェンジアップだけです。」
「わかった、何球かチェンジアップを入れてくれ。」
「はい。」
監督がキャッチッャーの後ろに位置する。
僕の球筋を見ている。
キャッチボールが終わった後に盛岡先輩に感想を聞いているようだ。
次は、守備練習。
3年生の集団が先頭だったが徐々に早い組と遅い組に分かれてくる。
僕とゴリは、3週目で先頭の集団に追いついていた。
ゴリは、6周目まで先頭集団の前。
僕は、その集団後ろに辛うじて付けていた。
終了すると吐き気を催す1年生がいた。
マネージャーがビニール袋を手渡している。
僕は、膝に手を置き背中で息をした。
そのあとは、サーキットトレーニング。
脚力だけでなく腹筋、体幹、背筋、腕と体全体のトレーニングに入る。
ピッチャーは、のびやかに伸縮する筋肉があればいいと思っている。
だから器具を使ったウエイトトレーニングは、しない。
ただ、自分の体の重さを負荷にする筋トレは、必要。
ここでも練習100%でやり切る。
8時00分に朝練終了。
用具の片づけをして汗を拭きアンダーを取り換える。
制服に着替える。
部室のロッカーは、汗の匂いが充満している。
夏になるとどんな匂いに変化するのだろう。
少し怖い気がする。
始業時間は、8時35分
ショートホームルームが10分程度。
そして1時限目が始まる。
ゴリと僕は、教室が違う。
一緒だったら良かったのにとゴリが言う。
今日は、4時限で終了。
13時30分から練習が始まる。
本格的な練習になると使用する用具も多くなる。
先輩に教えてもらいながら用意をする。
ゴリが先頭に立って動き声をかけている。
僕もゴリの音頭にのり手伝う。
「ルーは、やらなくてもいいんでないの。」
「やっぱり僕もしなくちぁ。」
ゴリは、一瞬考えてから「そうだね。」
準備運動をする。
マネージャーからキャッチボールの組を知らされる。
3年生キャチャーの盛岡先輩が相手。
キャッチボールは、野球の基礎。
軽く挨拶をする。
最初は、短い距離から軽く投球。
肩を慣らして徐々に長い距離をとる。
キャッチャーは、立ったまま。
今日は、マウンドから3mほど離れたくらいの距離で遠投だけ。
「白石~、変化球は?」
「僕は、真っすぐとチェンジアップだけです。」
「わかった、何球かチェンジアップを入れてくれ。」
「はい。」
監督がキャッチッャーの後ろに位置する。
僕の球筋を見ている。
キャッチボールが終わった後に盛岡先輩に感想を聞いているようだ。
次は、守備練習。
ランナーな~し。
ランナー1塁。
ランナー1塁。
投球のエア動作をする。
ノッカーからマウンド左右にゴロが放たれる。
ノッカーからマウンド左右にゴロが放たれる。
シチュエーションを変えながら投手候補全員の守備練習が順に繰り返される。
次にバッティング。
素振りからトスバッティング。
一週間後くらいからレギュラーピッチャーの
仕上がり次第で実践投球&打撃に移行すると言われる。
ここまで進んで監督が僕に
「白石、マウンドに立て。」
「駒沢~っ、バッター入れ。」
駒沢先輩は、3年生。
2年生からレギュラーの4番。
「盛岡、受けろ。」
監督「白石、勝負しろ。
ただし、7~8分で力を抜いて三打席連続投げろ。」
「もう一つ、盛岡のサイン通りに投げろ。」
実践さながらの設定で僕に全力投球をするなと言う。
何をさせたいのだろう?
一塁にランナーを置いた。
「盗めたらいつでも走っていいぞ。」とランナーに指示する監督。
盛岡先輩が、サインの確認に来た。
「グーは、ストレート。
グー、パーでチェンジアップでいいか?」
「はい、お願いします。」
キャップのひさしに手をかけて軽くお辞儀をした。
監督が宣告する。
スコア0-1で9回裏。
ノウアウトで一塁。
ピッチャー、リリーフで白石。
そういうことか。
でも7~8分の力?
監督の指示に従うほかない。
投球練習をしてから盛岡先輩を呼ぶ。
「一球目だけチェンジアップ使わせてください。
後は、指示通りに行きます。」
「かなり落ちますので捕球気を付けてください。」
「おっ」と軽く返事を返してくれた。
ロージンバックを拾う。
粉をボールに馴染ませる。
大きく呼吸した。
上体の力を抜く。
そして後ろを向きナインに「お願いしま~す。」と声をかける。
駒沢先輩が軽く会釈して右バッターボックス入る。
僕は、キャップを脱ぎあいさつした。
野球部員全員が手を止めてグラウンドを注視した。
一塁ランナーを目で牽制しながらセットポジションで一投目を投げる。
直球と同じような軌道のボールは、途中から急激に速度を落とし落ちてゆく。
駒沢先輩は、上体を前足に移動してバットを振る動作。
すんでにバットを止めた。
ボールは、ど真ん中の高めストライクからボールに軌道をとる。
ホームベースでワンバウンド。
キャチャー辛うじて体で後逸を防ぐ。
一塁ランナーは、意表を突かれてスタートできず。
止めた駒岡先輩のバットは、スィングを取られてワンストライク。
次にキャッチャーは、グーをサイン。
ミットは、インハイ。
ボールになってもいいからギリギリを投げろと指示している。
セットでもスムーズでのびやかなフォームでボールを放つ。
バッター振りに来た。
が、ボールの下を掠かする。
ふらふら~と上がった内野フライ。
キャッチャーが「ピッチャー」と補球を指示する。
僕は、声をかけて大きく手を上げ捕球体勢に入る。
まずは、ワンアウト。
駒沢先輩の顔に戦いの顔が現れた。
怒りを含んだ顔。
その顔を見て空を見ながら口から大きく息を吐く。
そのまま鼻からお腹一杯の吸気をする。
キャッチャーの要求は、ストレートのインロウ。
いわゆるクロスファイヤーボール。
インロウ、アウトローは、ピッチャーの生命線。
僕は、コントロールに自信を持つ。
12歳の時に元プロ野球の有名ピッチャーに教えられたことがある。
素振りからトスバッティング。
一週間後くらいからレギュラーピッチャーの
仕上がり次第で実践投球&打撃に移行すると言われる。
ここまで進んで監督が僕に
「白石、マウンドに立て。」
「駒沢~っ、バッター入れ。」
駒沢先輩は、3年生。
2年生からレギュラーの4番。
「盛岡、受けろ。」
監督「白石、勝負しろ。
ただし、7~8分で力を抜いて三打席連続投げろ。」
「もう一つ、盛岡のサイン通りに投げろ。」
実践さながらの設定で僕に全力投球をするなと言う。
何をさせたいのだろう?
一塁にランナーを置いた。
「盗めたらいつでも走っていいぞ。」とランナーに指示する監督。
盛岡先輩が、サインの確認に来た。
「グーは、ストレート。
グー、パーでチェンジアップでいいか?」
「はい、お願いします。」
キャップのひさしに手をかけて軽くお辞儀をした。
監督が宣告する。
スコア0-1で9回裏。
ノウアウトで一塁。
ピッチャー、リリーフで白石。
そういうことか。
でも7~8分の力?
監督の指示に従うほかない。
投球練習をしてから盛岡先輩を呼ぶ。
「一球目だけチェンジアップ使わせてください。
後は、指示通りに行きます。」
「かなり落ちますので捕球気を付けてください。」
「おっ」と軽く返事を返してくれた。
ロージンバックを拾う。
粉をボールに馴染ませる。
大きく呼吸した。
上体の力を抜く。
そして後ろを向きナインに「お願いしま~す。」と声をかける。
駒沢先輩が軽く会釈して右バッターボックス入る。
僕は、キャップを脱ぎあいさつした。
野球部員全員が手を止めてグラウンドを注視した。
一塁ランナーを目で牽制しながらセットポジションで一投目を投げる。
直球と同じような軌道のボールは、途中から急激に速度を落とし落ちてゆく。
駒沢先輩は、上体を前足に移動してバットを振る動作。
すんでにバットを止めた。
ボールは、ど真ん中の高めストライクからボールに軌道をとる。
ホームベースでワンバウンド。
キャチャー辛うじて体で後逸を防ぐ。
一塁ランナーは、意表を突かれてスタートできず。
止めた駒岡先輩のバットは、スィングを取られてワンストライク。
次にキャッチャーは、グーをサイン。
ミットは、インハイ。
ボールになってもいいからギリギリを投げろと指示している。
セットでもスムーズでのびやかなフォームでボールを放つ。
バッター振りに来た。
が、ボールの下を掠かする。
ふらふら~と上がった内野フライ。
キャッチャーが「ピッチャー」と補球を指示する。
僕は、声をかけて大きく手を上げ捕球体勢に入る。
まずは、ワンアウト。
駒沢先輩の顔に戦いの顔が現れた。
怒りを含んだ顔。
その顔を見て空を見ながら口から大きく息を吐く。
そのまま鼻からお腹一杯の吸気をする。
キャッチャーの要求は、ストレートのインロウ。
いわゆるクロスファイヤーボール。
インロウ、アウトローは、ピッチャーの生命線。
僕は、コントロールに自信を持つ。
12歳の時に元プロ野球の有名ピッチャーに教えられたことがある。
「 速いだけならバッターにとって怖くない。
ど真ん中の遅い真っすぐでも打ちづらい球がある。
更にアウトロウ、インロウが投げられれば君なら一流になれる。」
ど真ん中の遅い真っすぐでも打ちづらい球がある。
更にアウトロウ、インロウが投げられれば君なら一流になれる。」
そしてその投げ方も教えられた。
それ以来その教えに従い打ちづらい真っすぐ。
そしてイン、アウトの低めを心がけてきた。
針の穴を通すとまでは出来ないけれどそこそこのコントロールを持っている。
高校野球は、プロへのステップともなる。
有名高校の4番は、プロのドラフトに近い存在。
駒沢先輩もプロ行きが期待されている一人。
高校野球の頂点に立ちたいと思っている僕も
チームメイトとは言え簡単に打たせたくない。
でも7~8分かぁ。
より慎重にコースを突こう。
力まずにのびやかにバッターに向かい投げる。
ボールになると見た駒沢先輩が見送る。
ストライク。
7~8分の指示があるのでいつもよりもっと力を抜いている。
それでも伸びているようだ。
去年の秋以来バッターに向かって投げていない。
が、冬の基礎体力トレーニングとシャドーが活きているのか。
低めでも打者手前でホップしてホームベースをストライクの通過。
キャッャーがミットを下向きにしていた為ミットの土手に当ててしまう。
バッターの打ちづらい球は、キャッチャーも取りづらい球。
盛岡先輩は、こぼれたボールを素早く拾い上げる。
しかし、その間にランナー2塁へ。
本格派ピッチャーの腕の位置は、高い。
その腕の高さに加えて僕は、身長がある。
更にマウンドの高さがある。
中学の時は、よく3階から球が出てくると言われた。
特別な角度が付く。
それだけでもバッターにとって打ちずらい。
人間の目線は、上下の移動に弱い。
他の投手ならお辞儀してボールになる高さ。
それが伸びてギリギリのストライク。
久々ながら気持ちがいい。
2塁へ進塁された。
しかし、キャッチャーから距離の近い三盗は、難しい。
しかもバッターは、右。
ランナーにとって三盗は、リスクが大きい。
最悪三塁に進まれてもホームに返さなければいい。
ワンアウトでゼロボール、ワンストライク。
ここも同じくインロウのサイン。
しかし、ミットは一球目より下。
ボールにしてこいという指示。
うなずき2球目を投じた。
駒沢先輩辛うじてスィングを止めて判定は、ボール。
いいなぁ、中学とは違うなぁ。
次のサインは、アウトロウ。
左ピッチャーが最も投げづらいコース。
ズバッと行く。
バッター打った。
駒沢先輩は、予想していたようだ。
予想通りでもこのコースに正確に投げられれば長打はない。
一二塁間にボールが飛ぶ。
二塁手横っ飛びキャッチ。
ランナー飛び出そうとしていたが二塁にカバーなし。
難なく戻る。
これでツーアウト。
駒沢先輩は、本格戦闘モードにスイッチが入ったようだ。
先ほどまでの怒ったような表情から醒めた顔が出てきた。
体全体に気の炎が揺らいでいる。
素振りの迫力も増してきた。
マウンドまで風を切る音が聞こえてくる。
危険な場面で総毛立ちが起きそうになる。
その反面、内側から嬉しさの興奮が湧いてきた。
自然に頬きょう筋が上に動く。
勝ち試合にするか、
ランナーを増やす、もしくは同点を許す展開にしてしまうか。
正念場。
サインは、グー。
ミットは、ど真ん中。
え~!?
勝負していいんだ。
より大きくゆったりと動作して投げ込む。
ボール下を掠る。
キャッャー半立ち、キャッチングできず胸で止める。
ランナーは、走れず。
次も同じサイン。
真ん中高め。
バッター振り切る。
空振り。
ボールは、ミットに収まり2ストライク。
最後にしようと思う。
僕は、後ろを向きナインに2アウト、2ストライクを確認する。
ナインは、「バッター来~い。」と激を飛ばしている。
再びロージンを拾う。
7~8分の指示を守らず振り被って投げた。
全力のど真ん中の真っすぐ。
手を離れたボールは、角度をつけて真ん中に構えたキャッチャーミットに走る。
駒沢先輩がフンッ!とバットを振り下ろす。
バットにボールが乗る。
ボールが歪んでいる。
ボールがはじき返される。
ホームラン!!
あれ~?
速いだけの球。
ドンピシャ~?
「よ~し、お仕舞い~」
野球部全員が集合させられた。
「白石も駒沢も去年秋から実践を離れている。
練習も始まったばかり。
まだ実践練習には時期が早い。」
「だが、白石がいい感じのボールを投げていたのでテストしてみた。
キャッチボールの感じで力を抜いてどれだけ対戦できるか?
思い通り手元でグン、と伸びるいい球を投げていた。」
「白石は、あの感覚を忘れないように。」
「全力で投げるのは、気分はいい。
しかし、それが必ずしもいい球に成るわけではない。
スピードは出たかもしれないが伸びに欠いた。
駒沢は、そこを見逃さずに振り切った。」
「うちは、3年の峯岸と2年の嵯峨二人のエースがいる。
だが最後の締めくくりに弱みがあった。」
「白石は、1年生で長いイニングや連投はさせられない。
ところが、見ての通り一イニングなら十分に行ける見通しが立った。」
「今年は、野手にも優秀な選手が揃った。
全国制覇の現実味をもった。
みんなで一層練習を積んで甲子園の一番を目指そう!!」
「おお~~!!」
その日の練習は、終了となった。
「三人は、そのまま残ってくれ。」
3.に続く
それ以来その教えに従い打ちづらい真っすぐ。
そしてイン、アウトの低めを心がけてきた。
針の穴を通すとまでは出来ないけれどそこそこのコントロールを持っている。
高校野球は、プロへのステップともなる。
有名高校の4番は、プロのドラフトに近い存在。
駒沢先輩もプロ行きが期待されている一人。
高校野球の頂点に立ちたいと思っている僕も
チームメイトとは言え簡単に打たせたくない。
でも7~8分かぁ。
より慎重にコースを突こう。
力まずにのびやかにバッターに向かい投げる。
ボールになると見た駒沢先輩が見送る。
ストライク。
7~8分の指示があるのでいつもよりもっと力を抜いている。
それでも伸びているようだ。
去年の秋以来バッターに向かって投げていない。
が、冬の基礎体力トレーニングとシャドーが活きているのか。
低めでも打者手前でホップしてホームベースをストライクの通過。
キャッャーがミットを下向きにしていた為ミットの土手に当ててしまう。
バッターの打ちづらい球は、キャッチャーも取りづらい球。
盛岡先輩は、こぼれたボールを素早く拾い上げる。
しかし、その間にランナー2塁へ。
本格派ピッチャーの腕の位置は、高い。
その腕の高さに加えて僕は、身長がある。
更にマウンドの高さがある。
中学の時は、よく3階から球が出てくると言われた。
特別な角度が付く。
それだけでもバッターにとって打ちずらい。
人間の目線は、上下の移動に弱い。
他の投手ならお辞儀してボールになる高さ。
それが伸びてギリギリのストライク。
久々ながら気持ちがいい。
2塁へ進塁された。
しかし、キャッチャーから距離の近い三盗は、難しい。
しかもバッターは、右。
ランナーにとって三盗は、リスクが大きい。
最悪三塁に進まれてもホームに返さなければいい。
ワンアウトでゼロボール、ワンストライク。
ここも同じくインロウのサイン。
しかし、ミットは一球目より下。
ボールにしてこいという指示。
うなずき2球目を投じた。
駒沢先輩辛うじてスィングを止めて判定は、ボール。
いいなぁ、中学とは違うなぁ。
次のサインは、アウトロウ。
左ピッチャーが最も投げづらいコース。
ズバッと行く。
バッター打った。
駒沢先輩は、予想していたようだ。
予想通りでもこのコースに正確に投げられれば長打はない。
一二塁間にボールが飛ぶ。
二塁手横っ飛びキャッチ。
ランナー飛び出そうとしていたが二塁にカバーなし。
難なく戻る。
これでツーアウト。
駒沢先輩は、本格戦闘モードにスイッチが入ったようだ。
先ほどまでの怒ったような表情から醒めた顔が出てきた。
体全体に気の炎が揺らいでいる。
素振りの迫力も増してきた。
マウンドまで風を切る音が聞こえてくる。
危険な場面で総毛立ちが起きそうになる。
その反面、内側から嬉しさの興奮が湧いてきた。
自然に頬きょう筋が上に動く。
勝ち試合にするか、
ランナーを増やす、もしくは同点を許す展開にしてしまうか。
正念場。
サインは、グー。
ミットは、ど真ん中。
え~!?
勝負していいんだ。
より大きくゆったりと動作して投げ込む。
ボール下を掠る。
キャッャー半立ち、キャッチングできず胸で止める。
ランナーは、走れず。
次も同じサイン。
真ん中高め。
バッター振り切る。
空振り。
ボールは、ミットに収まり2ストライク。
最後にしようと思う。
僕は、後ろを向きナインに2アウト、2ストライクを確認する。
ナインは、「バッター来~い。」と激を飛ばしている。
再びロージンを拾う。
7~8分の指示を守らず振り被って投げた。
全力のど真ん中の真っすぐ。
手を離れたボールは、角度をつけて真ん中に構えたキャッチャーミットに走る。
駒沢先輩がフンッ!とバットを振り下ろす。
バットにボールが乗る。
ボールが歪んでいる。
ボールがはじき返される。
ホームラン!!
あれ~?
速いだけの球。
ドンピシャ~?
「よ~し、お仕舞い~」
野球部全員が集合させられた。
「白石も駒沢も去年秋から実践を離れている。
練習も始まったばかり。
まだ実践練習には時期が早い。」
「だが、白石がいい感じのボールを投げていたのでテストしてみた。
キャッチボールの感じで力を抜いてどれだけ対戦できるか?
思い通り手元でグン、と伸びるいい球を投げていた。」
「白石は、あの感覚を忘れないように。」
「全力で投げるのは、気分はいい。
しかし、それが必ずしもいい球に成るわけではない。
スピードは出たかもしれないが伸びに欠いた。
駒沢は、そこを見逃さずに振り切った。」
「うちは、3年の峯岸と2年の嵯峨二人のエースがいる。
だが最後の締めくくりに弱みがあった。」
「白石は、1年生で長いイニングや連投はさせられない。
ところが、見ての通り一イニングなら十分に行ける見通しが立った。」
「今年は、野手にも優秀な選手が揃った。
全国制覇の現実味をもった。
みんなで一層練習を積んで甲子園の一番を目指そう!!」
「おお~~!!」
その日の練習は、終了となった。
「三人は、そのまま残ってくれ。」
3.に続く