期待は虚しく雨と風の残る午前中は、大人しく読書で時間を潰す。
昼少し前から陽が射してきた。
午後は、ひとっ走りと決め昼の饂飩をすすり終え
夕飯の買い物を早めに済ますためスーパーへ向かう。
まだ強い風が残っている。
店の少し手前で向こうから二人の若い衆が同じく玄関を目指していた。
その時、突風が一陣した。
風は、若い衆一人のマスクを引っ剥がす。
マスクは、ジジィの頭上をひらりと飛蝶した。
刹那、俺はジャンプしていた。
左手を伸ばしキャッチしょうとした。
その瞬間にもうひとひらりマスクが舞う。
無常にも俺の左手は、届かなかった。
あれを取っていれば格好良かったんだがなぁ。
しかし、当該の若い衆は、俺にありがとうございます、
と一言礼を残してくれた。
気分良し!
4月も終わりに近づいたある日のこと。
夕刊の配達を終えたジジィは、
帰り道の店先で旗竿の倒れているを見留めた。
コンクリート台座ごと歩道に横たわっている。
直そうと近づく。
そこに不思議なものを見た。
話は少し逸れる。
おまじない、
これを漢字で書きなさいと出題されたら?
正解は、御呪いなのだそうな。
元道に戻る。
今年は、風が強く吹く春。
これほど連日吹き荒れる年も珍しい。
その日の風は、瞬間風速29.2m/sと台風並み。
旗竿はこの強風で倒された。
その台座の置かれていた場所に見た不思議なもの。
結構な歳月を感じる汚れよう。
1枚、2枚なら転がって台の下に入り込んだ、とも考えられる。
この枚数でしかも台の真下中央の位置。
これは意識的に置いた、としか考えられない。
なぜ?
おまじないなのだろうか?
インターネットで調べるとその可能性が高い。
金運向上、験担ぎ。
ん?
験担ぎの験は、なに?
験担ぎは、縁起担ぎが、起縁となり
きえんがげん-験に転じた説が有力らしい。
呪まじないは、神仏にかける願い事。
豊作を願うのも呪いになる。
10円硬化は、店の繁盛を願ったんだな。
確実に叶う呪いがあればと思う。
平和の呪い。
今起っている東ヨーロッパの惨劇を鎮める呪いがあるならと思う。
あるわけがない。
あるなら世界に戦争など起きないし、起きても大おお事にならずに済む。
思いつつ願うだけでしかない自分。
やりきれなさの日々。
でもな、諦めたらお終い。
叶わなくてもなにかしよう。
せめて飛び上がってみようか。